いじめの法的問題

事故やいじめにおける学級担任と管理職の責任

 学校で児童・生徒に事故やいじめの問題が発生した場合に、学級担任や管理職が被害者である児童・生徒に対して、損害賠償責任を負うかどうかの問題を考える際のスタートは、これらの者の民事上の法的責任です。

まず、一般的な民事責任のルールからすると、事故やいじめが起きた教育活動、場所などの事情から判断して、学級担任である一般教員の過失と被害者である児童・生徒の損害との間の因果関係が認められる場合には、法律の理論上、その一般教員は、被害者である児童・生徒に対して、個人的に、損害賠償義務を負うという評価がされることになります(民法709条)。そして、この場合、校長や教頭などの管理職は、その一般教員が過失によって児童・生徒に損害を与えたとき、その一般教員と管理職は、共同不法行為(複数の人間の関与により、権利・利益侵害の結果を発生させる行為のこと:民法715条)として、被害者である児童・生徒に、直接、損害賠償責任を負うという評価がされることになりえます。

しかしながら、実際に、一般教員や管理職が被害者である児童・生徒に対して損害賠償金を支払う義務を負うかどうかは別の問題となります。この問題は、公立学校の教員の場合と私立学校の教員の場合で区別をして考える必要があります。

まず、学校の大半を占める公立学校の場合について考えます。公立学校の場合には、国家賠償法という特別の法律が適用されることになっています。この法律では、公立学校の一般教員や管理職は、直接、被害者に対して具体的な損害賠償義務を負わないとされています(国家賠償法1条1項)。そして、代わりに、学校を設置している地方自治体が、被害者に対して、直接、損害賠償責任を負うことになっています。

これに対して、私立学校の場合について考えますと、私立学校の場合には、国家賠償法の適用がないもので、民法のみが適用され、一般教員や管理職の責任が問題とされます。そして、学校設置者である学校法人(一般教員や管理職の雇用契約上の雇用主)は不法行為法上の使用者責任(一般的には、従業員が仕事上のミスで第三者に損害を与えてしまった場合に、 損害に対する直接的な加害者でない雇用主がその損害賠償責任を負うとされている制度:民法715条1項)も、被害者に対して、直接に、損害賠償責任を負うことになります。

なお、被害者と学校法人との間には在学契約があることから、学校法人は、この在学契約に附随する義務である安全配慮義務(教育課程において児童・生徒の安全を確保すべき義務)に違反したことを理由として、契約違反に基づく損害賠償責任(債務不履行に基づく損害賠償請求:民法415条)を直接、負わされることも考えられますが、この法律構成がされる場合には、一般教員や管理職の責任は問題とされないことになります。

(参考文献)

神内聡『第2版 学校内弁護士』(日本加除出版 2019)44頁

 教員の注意義務について:関口博=菊地幸夫『学校事故の法務と対処法Q&A』(三協法規出版 改訂版 平成28年)32-33頁、99-101頁

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