自治体コンプライアンス

議会による首長の刑事告発決議と首長による議会の解散権【2】(千代田区長高級マンション購入事件)

議会による首長の刑事告発決議と首長による議会の解散権(千代田区長高級マンション購入事件)の続き

報道された事件

昨年2020年7月に、東京都千代田区の区長が、一般には販売されない区内の高級マンションの一室を優先購入していたとして、千代田区議会の百条委員会で調査を受け、その際に、区長が、区長を刑事告発する方針を議決した区議会に対し、解散通知を出したことが報道されました。その後、8月に、解散処分につき執行停止とする東京地裁の決定を受けて、区長が、区議会の解散通知を取り消した旨の報道がなされました。

そして、今年2021年6月29日に、千代田区の前区長が区議会の解散を通知したのは地方自治法に違反するとして、区議や元区議計18人が千代田区に計198万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地裁であり、解散通知は違法と認められ、計99万円の支払いを命じられたことが報道されました。前区長の解散通知について、区長への不信任議決を経ておらず、地方自治法の要件を欠き違法である、と判断され、原告の区議らが、訴訟で支払った弁護士費用などは損害に当たるとされています。

「時事ドットコムニュース」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021062900882&g=soc

その後、2021年7月8日に、千代田区は、前区長が2020年7月に区議会解散通知を出したことをめぐる紛争について、東京地裁が「解散通知は違法」であるとした判決を受け入れることを発表しました。(7月13日付「都政新報」による報道)

「千代田区議会解散に関する訴訟 東京地裁判決に対する樋口区長コメント(令和3年7月8日配信)」
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kuse/koho/pressrelease/r3/r307/20210708.html

今後、千代田区が区議らに支払う損害賠償金については、国家賠償法第1条第2項に基づき、前区長に求償することになります。

(参照条文)
国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

>>>議会による首長の刑事告発決議と首長による議会の解散権【1】

選挙ドットコムに掲載した記事です(2021年7月15日)

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