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議会による首長の刑事告発決議と首長による議会解散権【1】(千代田区長高級マンション購入事件)

議会による首長の刑事告発決議と首長による議会解散権(千代田区長高級マンション購入事件)

少し前の昨年2020年7月から8月にかけての事件ですが、大阪府池田市の事件との関係があり、事件をフォローしていましたので整理し、まとめてみました。

・報道された事件

昨年2020年7月に、東京都千代田区の区長が、一般には販売されない区内の高級マンションの一室を優先購入していたとして、千代田区議会の百条委員会で調査を受け、その際に、区長が、区長を刑事告発する方針を議決した区議会に対し、解散通知を出したことが報道されました。その後、8月に、解散処分につき執行停止とする東京地裁の決定を受けて、区長が、区議会の解散通知を取り消した旨の報道がなされました。

区長は、一般には販売されない区内の高級マンションの一室の優先購入に関して区議会の百条委員会で調査を受けました。その際に、区長は、区長自身への刑事告発の方針を決議した区議会に対して、解散通知を出しましたので、その解散通知が有効であるか、すなわち、その解散通知の前提となる区議会における区長を刑事告発する方針の決議が不信任決議となるかどうかが検討されるべきです。まず、百条委員会の意味を確認して、その後に、不信任決議がなされた場合の市長による議会の解散権の要件を確認します。

NHKによる報道(2020年7月31日)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/42718.html

朝日新聞による報道(2020年8月8日)
https://www.asahi.com/articles/ASN884597N87UTIL047.html

・百条委員会について

百条委員会は、地方自治法100条に基づき、自治体の長や議員に疑惑や不祥事が生じた場合、その真相を究明するため、地方議会による設置されるものです。関係者が出頭せず、もしくは、記録を提出しないとき、または、証言を拒んだときは、6か月以下の禁固または10万円以下の罰金に処せられます(地方自治法100条3項)。そして、虚偽の陳述をしたときは、3か月以上5年以下の禁固に処せられます(地方自治法100条7項)。

地方議会には、その地方公共団体の事務に関する調査を行う強力な権限(「100条調査権」と呼ばれます)が付与されています(地方自治法100条1項)。地方議会によるこの100条調査権の行使のために、特別委員会である百条委員会が設置されます。ただ、その百条委員会が100条調査権を行使するためには、議会からの個別具体的委任を受ける必要があります。

・区議会における区長を刑事告発する方針の決議が不信任決議となるかどうか

不信任決議は、自治体の長に議会の解散権を認めることになるものですので、その性質上、厳格な手続きで行われるべきものです。

要件1 議会として、長に対して、直接かつ明確に不信任の意見を表示していること

要件2 一定数以上の議員の出席と特別多数議決を経ていること

不信任決議が成立するためには、議員数の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者が同意することが必要です(地方自治法178条1項・3項)。これは、不信任決議が住民の意思により選ばれた地方自治体の長を議会が失職させるものであることから、通常の表決(地方自治法116条)の場合とは異なり、その手続きを慎重にしているものです。

千代田区長の事件の場合、議会が区長について刑事告発する方針を決めたということに関して、長に対して、直接かつ明確に不信任の意見を表示していた、ということはできないものと評価されます。そうすると、この場合に、区長が議会を解散することは、区長の権限を逸脱するもので、違法・無効な解散権行使と言わざるを得ないものと考えられます。

地方自治体の首長と議会の対立の問題については、全国的に報道されるものではありませんので、あまり一般の有権者に意識されるものではありません。しかし、重要な問題です。この問題については、機会を見つけて、検討していきたいと思います。

>>>議会による首長の刑事告発決議と首長による議会解散権【2】

選挙ドットコムに掲載した記事です(2021年5月3日)

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