スクールコンプライアンス

スクールロイヤーとは?

スクールロイヤーについて、まだ、明確な一般的な定義はありませんが、一応、学校で起こるいじめや保護者とのトラブル等を法的に解決する弁護士ととらえられているようです。ただ、この定義では、意味内容が明確であるとは言えません。そこで、スクールロイヤーの意味について、検討してみることにします。公式に、いくつかの意味・定義が公表されていますので、順に検討をしていきます。

文部科学省・中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」

まず、文部科学省・中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」(平成27年12月21日)において、スクールロイヤーという言葉が用いられているわけではないのですが、教育対象暴力の一部として不当な要望等への対応に弁護士を活用することが提案されています。そこで、まず、「スクールロイヤー」には、学校における不当な要望等への対応を行う弁護士という意味があります。

いじめ防止対策推進法

近時のいじめ問題の深刻化を背景として、平成25年、いじめ防止対策推進法が制定されました。この法律では、いじめを防止ないし調査する体制構築の際に、外部の関係諸機関や心理・福祉等の専門家の関与が要請されています。この法律を受けて「いじめの防止等のための基本的な方針」が出されています(平成25年10月11日文部科学大臣決定・最終改定 平成29年3月14日)。この法律の第22条(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)に関して、いじめの防止等の対策のための組織に参加すべき外部専門家の一員として、弁護士が示されています。ここでも、スクールロイヤーという用語は使用されていないのですが、文部科学省は、弁護士をいじめ防止等の支援者と位置付けています。

「いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究」予算

そして、その後、文部科学省は、スクールロイヤーに関して、その用語を明確に用いて、平成29年度(2017年)から「いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究」の予算を計上しています。そして、平成31年(2019年)に「2019年度予算(案)主要事項」の説明における、その調査研究に関して、「法律の専門家である弁護士が、その専門的知識・経験に基づき、学校において法的側面からのいじめ予防教育を行うとともに、いじめなどの諸課題の効率的な解決にも資する、学校における相談体制の整備に関する調査研究を実施(3地域)」としています。このことから、文部科学省は、スクールロイヤーについて、いじめ防止等の支援者と位置付けていることがわかります。

以上のような動きの中で、文部科学省の平成30年(2018年)度予算において、上記の「いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究」に予算が計上されたことを契機として、日本弁護士連合会は、平成30年(2018年)1月18日に「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」を発表しています。ここでは、スクールロイヤーについて、「各都道府県・市町村の教育委員会、国立・私立学校の設置者において、学校で発生する様々な問題について、子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育や福祉等の視点を取り入れながら、法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士」として定義しています。日本弁護士連合会は、スクールロイヤーについて、いじめ防止等の支援者という限定的な意味ではなく、かなり広汎な意味を持つものとして定義をしています。

そして、2019年(令和元年)9月において、文部科学省は、「令和2年度予算概算要求の概要」の中の「文部科学省における児童虐待への対応」資料の中で、スクールロイヤーについて、学校や教育委員会からの法務相談への指導助言、コンプライアンスや紛争予防に関する教職員研修、トラブル発生時の初期対応などを職務とする者とし、「スクールロイヤーは、児童生徒への教育上の配慮や管理職・スクールカウンセラー等の学校関係者との連携など、学校の事情等に精通し、迅速な初期対応と継続的な支援を行う専門人材」として、説明しています(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000552876.pdf)。この点から、スクールロイヤーは、市町村教育委員会・学校から学校の諸課題に関する法務相談を受ける弁護士としての位置付けがなされていると考えられます。

以上のように見てくると、広い意味でのスクールロイヤーは、日本弁護士連合会の定める定義である「学校で発生する様々な問題について、子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育や福祉等の視点を取り入れながら、法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士」ということができると思われます。

そして、狭い意味でのスクールロイヤーは、教育対象暴力すなわち不当な要望等(不当要求対応のためのスクールロイヤー)、いじめ防止等の対策(いじめ対策としてのスクールロイヤー)、児童虐待への対応・解決(児童虐待対応のためのスクールロイヤー)といった、学校における一定の課題解決のために対応する弁護士であると定義づけられると考えられます。

昨今のスクールロイヤーの設置状況

そして近時、2019年9月の記者会見で、萩生田光一文部科学大臣は、2020年度から各都道府県・各政令指定都市では、全国で約300人のスクールロイヤーを配置する方針を示しました。そして、現在、文部科学省は、令和2年(2020年)1月24日付で都道府県教育委員会及び指定都市教育委員会宛て事務連絡「教育行政に係る法務相談体制の充実について」を発出しています。この制度では、都道府県・指定都市教育委員会が委託するスクールロイヤーが、各市区町村教育委員会及び各市区町村教育委員会が設置する小中学校から相談を受ける体制が想定されています。そして、この制度に関して、令和2 年度から、都道府県及び指定都市教育委員会における弁護士等への法務相談経費について、普通交付税措置が講じられることとなっています。

-スクールコンプライアンス

© 2021 自治体スクールコンプライアンス研究所 Powered by AFFINGER5