ハラスメントの法的問題

キャンパスハラスメントの意義

まず、キャンパスハラスメントの意味については、大学キャンパスで起こるさまざまなハラスメントを包括する意味として使われることが多いようですが、キャンパスハラスメントの定義が明確でないことが指摘されています。そこで、キャンパスハラスメントの定義について、いくつかの定義を検討してみます。

まず、「大学等において、相手方の意思に反した不適切な言動をすることにより、相手方に不快感や不利益を与える人権侵害行為であり、学習・研究又は労働の環境を悪化させる行為を広く指すもの」、すなわち、「セクハラ・パワハラ・アカハラ等の各種ハラスメント行為について、それが大学等においてなされた場合を広く指す総称」とされています(飛翔法律事務所編著『改訂2版 キャンパスハラスメント対策ハンドブック』[経済産業調査会 2018]17頁)。

また、「大学内で発生するハラスメントは『キャンパス・ハラスメント』と総称される。それは,性的な迷惑行為によって相手への尊厳を傷つける『セクシュアル・ハラスメント』だけでなく,地位や権限を利用した不適切な言動によって,教職員や学生の教育や研究の権利を侵害する『アカデミック・ハラスメント』,また就労面に関する職務上の上位者が,下位の者への権利を侵害する『パワー・ハラスメント』が含まれる。」(古城幸子等「大学職員のキャンパス・ハラスメント予防への意識」新見公立大学紀要32巻(2011)55頁)とされています。

他に、キャンパスハラスメントについて、広義と狭義に分けて説明がなされる場合もあります。広義では、大学内で生じる様々なハラスメント行為をキャンパスハラスメントであるとし、そして、大学の職場における、セクハラとパワハラ、そして、大学の研究・学びの場における、セクハラ(キャンパス・セクハラ)とアカハラ(アカデミックハラスメント)の4種類を包含するものとされ、狭義では、大学の研究・学びの場における、セクハラ(キャンパス・セクハラ)とアカハラ(アカデミックハラスメント)の意味で用いられるとされています(吉川英一郎「キャンパス・ハラスメントの近時判例傾向について」同志社法学66巻5号[2015年3月]248~249頁参照)

いくつかの定義を見て整理をすると、まず、広義のキャンパスハラスメントとして、「大学等の内部で生じる様々なハラスメント行為」として、包括的に定義をすることができます。また、その主な具体的内容として、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、アカデミックハラスメントの3種類のハラスメントがあり、近時は、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントだけでなく、マタハラ(マタニティハラスメント)、ソーハラ(ソーシャルハラスメント)、アルハラ(アルコールハラスメント)などの新しいハラスメントも問題となっているものであることから、これらのハラスメントを含む包括的なものと定義することができます。すなわち、キャンパスハラスメントについて、セクハラ、パワハラ、そして、アカハラの3種類であると限定する必要はないものとして定義されるべきものと考えられます。

そして、狭義のキャンパスハラスメントとは、大学等の研究・学習の場におけるハラスメントであり、セクハラ(いわゆる「キャンパス・セクハラ」)とアカハラ(アカデミックハラスメント)を指すものとして定義をすることができます。 そして、キャンパスハラスメントは、場所が大学等の高等教育機関であり、また、そのハラスメントの主体が、大学の構成員(教員、職員および学生)であるものとなります。キャンパスハラスメントが生じる人間関係は、理論上、教員―教員間、職員―職員間、学生―学生間、教員―学生間(教員→学生)、教員―職員間、職員―学生間(職員→学生)という類型に分けることができると思います。

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